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代表派遣会議出席報告
1 名 称  第6回火山都市会議(Cities on Volcanoes 6 Conference)
2 会 期 2010年5月31日~6月4日(5日間)
3 会議出席者名  中田節也
4 会議開催地 スペイン国プエルト・デラ・クルス(テネリフェ島)
5 参加状況参加国数、参加者数、日本人参加者)  参加国52カ国(地域を含む),参加者数864名,日本人参加者62名
6 会議内容

・日程及び会議の主な議題
5月31日~6月4日の間,実4日間のシンポジウムが開催された。中日の6月2日にはテネリフェ島を中心とする活火山とその火山災害に対する取り組み等について視察旅行があった。シンポジウムは大きく次の4つから構成された。1)火山を知る。2)火山とともに生きる(危機管理)。3)火山とともに生きる(火山教育)。4)前大会(2007年島原大会)以降の火山災害と危機管理。
・ 会議における審議内容・成果  
火山噴火観測研究や技術の進捗状況,および,火山災害発生前や発生時における火山研究者対応や社会のリスクマネージメント等に関する研究発表や意見交換がなされた。また,ジオパーク等を含めた火山教育・アウトリーチの効用に関する研究発表とそれについての意見交換がなされた。さらに,アイスランドの火山噴火による火山灰被害についても意見交換し,火山学の立場から貢献すべきポイントについて意見交換がなされた。
・会議において日本が果たした役割  
三宅島2000年噴火の災害に関する防災関係者や研究者の対応,日本における地熱エネルギーの現状と将来性などについての基調講演を行った。また,主要な複数のセッションで日本人研究者が座長を務めた。さらに,IAVCEI会長(中田)は開会式での会議趣旨説明,会議声明文作成や合意文章のとりつけなどを牽引した。
・ その他特筆すべき事項
IAVCEI会長のコメントが地元新聞6月2日版に掲載された。また,テネリフェ島に火山研究所を作る計画に対して支持声明文が読み上げられた。さらに,火山研究の成果を防災に活用する機能として世界火山都市組織を作る合意が世界の関係市長間でなされた。

7 会議の模様

・会議のスタイルは前回の島原大会のものをほぼ踏襲して行われたが,地元の再生エネルギー技術研究所の火山研究者数名が中心となって会議準備した。基調講演をベースとしてそれぞれのセッションに分かれての講演形式であったが,後援者とコンビーナーの事前の準備が十分とはいえず,あまり活発な議論が行われなかったように見受ける。ただし,会議の合間の昼食やコーヒーブレイクや前後になったパーティー等においては,随所で積極的な議論がなされていた。
・最近の観測の技術においては衛星を使ったInSARやGISを用いた防災情報の発信,および,携帯型火山ガス観測装置を用いた研究等が目立っており,日本の研究者の発表も目立った。一方,噴火現象の理論モデルを用いたシミュレーションの研究がイタリアや英国を中心として盛んに行われており,この点日本は後発的な印象を強く持った。さらには,噴火間隔の長い規模の大きな噴火を予測するために,過去の火山噴火に関するデータをアーカイブし統計的に処理する試みが英国,米国,シンガポール,フランスなどで積極的に行われており,それに日本の豊富なデータが重要な位置を占めていることが印象的であった。自国のデータは自国で統計的な処理や物理モデルに取り込む仕組みを作ること,また,それができる研究者を育成することが急務であると強く意識させられた。
・会議最終日には,約1ヶ月前にヨーロッパ全土を中心に大混乱を引き起こした,アイスランド噴火の火山灰災害について特別フォーラムが設けられ情報交換がなされた。ヨローッパを中心として火山研究者が緊急対応を迫られたが噴火自身や火山灰モデルの確度,および種々航空機への具体的影響などについての情報が不十分であって混乱したことが報告された。また,噴煙モデルについても研究者サイドがさらに改良をする必要があることなどが指摘された。2011年6月にIUGG総会で他のAssociationと共同で企画する,火山噴火のモニタリングのユニオン・セッションにおいてさらに議論したい旨,IUGG総会主催LOCi委員長Ray Casから提案があった。
・IAVCEI会長(中田)がアイスランドの噴火に際して,同様の噴火がテネリフェ島で起こりうること,火山災害に備えた準備が今から必要であること,火山を研究する若手研究者の育成の必要性あるなどとしたコメントが地元新聞のDiario de Avisos 6月2日版に掲載された。また,数年前からテネリフェ島に火山研究所を作る構想があり中座している計画に対して,IAVCEI会長を含む会議参加者有識者による「支持」の声明文が読み上げられた。さらに,火山に隣接する世界の都市が,IAVCEIのCities and Volcanoes Commissionの活動と平行して,火山学の学術的成果を政策として防災に役立てること,および,今後のIAVCEI関連の会議開催を支援することを目的とした,世界火山都市組織を作るという合意を,日本の2都市(鹿児島市,島原市)を含む世界6都市で締結された。
・次回開催予定:2012年11月19日~23日。メキシコ合衆国コリマ州コリマ市においてコリマ大学が主催。


開会式の模様(右端が筆者)

地元紙Diario de Avisos 6月2日版の社会面に掲載されたIAVCEIk会長(中田)のインタビュー記事

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