日本学術会議 トップページ > 代表派遣 > 代表派遣結果等
 
代表派遣会議出席報告
1 会議概要
1)名 称 
  (和文) 国際農業工学会2009年執行役員会及び関連会議、第5回国際農業工学会専門部会VIシンポジュウム「食品加工、バイオプロセスにおけるモニタリング技術ならびに食品の品質管理」
  (英文)  CIGR Presidium and Related Meeting and the 5th CIGR Section VI International Technical Symposium in Germany,“on Food processing, Monitoring Technology in Bioprocesses and Food Quality Management”
2)会 期 21年8月30日~9月2日(4日間)
3)会議出席者名 前川 孝昭、佐藤 洋平
4)会議開催地  ドイツ国 ポツダム市
5)参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)  50カ国、200名、15名 
6)会議内容

  第5回国際農業工学会専門部会VIシンポジュウム「食品加工、バイオプロセスにおけるモニタリング技術ならびに食品の品質管理」が平成21年8月31日から平成21年9月2日まで3日間の会期でドイツ国ポツダム市で開催された。このシンポジュウム開催の前日、8月30日に国際農業工学会2009年執行役員会、理事会を開催、CIGRの活動方針、決算、CIGR表彰規定の見直し、2010年カナダ国開催の国際コングレスの準備状況などを審議した。また、8月31日には専門技術委員会を開催した。本年度からワーキンググループのコーディネータも加わり、7つある専門部会の略称など技術の進歩や社会の情勢を勘案して検討し、次回の総会に諮ることになった。   また、シンポジュウムは8月31日に基調講演を皮切りに口頭発表として138報告、ポスター発表として181報告が実施された。その参加国および参加者は50ケ国、200人で、日本は7番目の15人の参加者であった。ドイツ40名、中国30名、イラン25名が1位、2位、3位であった。口頭発表を16課題に、ポスター発表を6部門に分け、よく整理されていた。また、良く組織化されたシンポジュウムであった。
・日程及び会議の主な議題
8月30日 9:00-14:00 CIGR執行役員会 
  1) 事務局長として会長を補佐し、次期事務局長木村俊範教授の紹介及びオブザーバーとして出席のもとに、理事会、専門技術委員会への提出議案を作成した。また、CIGR理事会へ報告する次期会長候補の選任、2008年度のCIGR予算、決算を監査人2人の監査結果(日本、ベルギー)と併せて報告した。表彰(Ejournal 賞、Armand Blanc賞(30歳以下の若手研究者の表彰制度)、CIGR会長賞、CIGR名誉会長賞、名誉副会長賞)について、その表彰規定の改正案を検討した。細部に調整する事項があるため、次回の理事会での審議を経て2010年のCIGR国際コングレスの総会に提出することになった。
  2) CIGR 電子ジャーナルの編集委員長の選任について検討した。中国側の強い希望があったが、1国1学会の統一化の問題や雑誌の出版にこだわる意図が強く見えることなどの問題があり、執行役員会の後に開催される理事会で説明を受けた後、再度継続審議することになった。 2) CIGR 電子ジャーナルの編集委員長の選任について検討した。中国側の強い希望があったが、1国1学会の統一化の問題や雑誌の出版にこだわる意図が強く見えることなどの問題があり、執行役員会の後に開催される理事会で説明を受けた後、再度継続審議することになった。 2) CIGR 電子ジャーナルの編集委員長の選任について検討した。中国側の強い希望があったが、1国1学会の統一化の問題や雑誌の出版にこだわる意図が強く見えることなどの問題があり、執行役員会の後に開催される理事会で説明を受けた後、再度継続審議することになった。
  3) 事務局提案のCIGRに関連する会議の定義に関して、CIGR Co-Sponsored meeting の表現にはあいまいさがあるので、米国及び日本での定義に照らし合わせて「後援」にあたる CIGR Supported meetingとすることとし、理事会に諮ることとした。
  4) 3回目の執行役員会を本年11月ごろ、skypeを用いて試行的に実施することになった。
8月30日 15:00-17:00 CIGR理事会
  1) CIGRの活動・2008年決算および2010年予算等について2010年までの経過報告及び計画案を提出し、承認を得た。さらに、CIGR 執行役員会における次期会長候補の選任の結果を報告し、理事会の承認を得た。
  2) 2016年までのCIGR主催会議の会期を決定した。会議の開催に先立ち、2010-2013の次期事務局を北海道大学に移動することに伴い、木村俊範次期CIGR事務局長を理事会のオブザーバーとして紹介し、その出席の承認を得た。
  3) 2008年ブラジルにおける理事会で承認された2016年の第4回CIGR国際コンファレンスはデンマーク国での開催とすること、および欧州農業工学会共同主催とすることを承認し、この提案を2010年のカナダで開催される国際コングレスの総会に諮ることになった。 2010年カナダクベック市で開催されるCIGR国際コングレスの開催内容について主催者側のパンフレットに基づき説明を受けた後、開催内容を詳細に吟味した。CIGR本体の財源になっているLevyの取り扱いならびにその契約について意見交換し、合意に達した。 また、2014年中国北京市開催の国際コングレスの開催骨子及び開催日時が暫定案として、2014年9月16日-9月19日とすることなど、中国主催者側の説明があったが、理事会は、9月初旬の開催を希望した。このため、主催者国側は本国に持ち帰って再検討し、次回総会までに開催日の決定を約束した。
  4) CIGR 電子ジャーナルの編集委員長の選任について検討した。中国側の強い希望があったが、1国1学会の統一化の合意の達成が遅れていることや雑誌の出版にこだわる意図が強いので、執行役員会の後に開催された理事会で説明を受けた後、再度継続審議することになった。
  5) 事務局提案のCIGRに関連する会議の定義に関して、CIGR Co-Sponsored meeting の表現にはあいまいさがあるので、米国及び日本での定義に照らし合わせて「後援」にあたる CIGR Supported meetingとすることになった。
  6) 表彰規定の原案の中で細部調整の必要性を指摘し、次回執行役員会にて審議後、次会のカナダケベック市の国際コングレスの理事会において再審議することになった。それまでの運用は原案に沿うことになった。
8月31日 18:00-20:30 CIGR 専門技術委員会
  セクション(専門部会)Iからセクション(専門部会)VIIの部会の活動状況及び7つのワーキンググループ委員会の報告の検討を行った。この委員会にはCIGR理事会の理事及び次期事務局長の木村俊範教授も参加した。また、ブラジル開催の総会で改正された規定に基づき、ワーキング部会のコーデネィ―タも参加した。各セクションの略称について会長案及び各セクションにおける案について検討した。第6セクションは原案のEngineering of Food Technology をセクション案の Engineering of Bioprocesses とすることを表明していた。これは前日開催の理事会後に開催した第6セクション(専門部会)の審議を踏まえた決定であることが報告されたので、原案を修正し、変更案を承認した。また、第1部会はEngineering of Land and Water,第7部会はEngineering of Information Technology とする原案を承認した。その他は各部会長に確認した後、次回のカナダで開催の国際コングレスの総会に提案することになった。
8月31日 9:00-12:30
  IHI Potsdam 会場にて開会式及び4課題の開催記念講演会に出席した。特に本シンポジュームに関連する食品の安全に関するナノテクノロジーや乾燥技術ならびに紫外、可視、近赤外、外赤外領域の電磁波を用いた画像処理による食品の汚染のモニタリング技術について先端科学技術の研究成果の紹介がなされた。この中には日本人研究者が行った食品の画像処理による品質管理技術が紹介されたことが特筆される。
8月31日-9月2日 
  8月31日は13:00-17:00、9月1日は9:00-17:00、9月2日は9:00-12:00 第5回国際農業工学会専門部会VIシンポジュウム「食品加工、バイオプロセスにおけるモニタリング技術ならびに食品の品質管理」は、CIGRの第6専門部会が主催するもので、CIGRの組織の中で学術活動を強く打ち出したシンポジュウムである。又、共催した学術団体はポツダム市に活動拠点を持つ農業技術研究機構(ATB: Leibniz Institute for Agricultural Engineering Potsdam-Bornim)の園芸工学部門である。後援はCIGR傘下の米国農業工学会(ASABE)、欧州農業工学会(EurAgEng)ならびに欧州食品科学技術連盟(EEFOS)及び工学及び食品に関する国際欧州連盟(IAEF)の4組織である。シンポジュームの開会はホテルから5分ほど離れたIHK会場に参加者が一堂に集まって、行なわれた。その後4課題の基調講演があり、このシンポジュウムの目的が、食品の安全と管理を目的にした先端的学術の研究動向を集約することと今後の方向を探り、さらにこれを学術的に明確にするという意図であることが明確に示されていた。
    基調講演の課題は、次のとおりである。    
    Nanotechnology in Food Industry (Prof. Jayas, Canada)  
    Drying Technology: trends and application in postharvest processing (Prof. Mujumdar, Singapore)
    Emerging Technology in Food Processing (Prof. Knorr, Germany)
    Hyperspectral imaging for food quality evaluation (Prof. Sun, Ireland)
  このシンポジュームの課題発表には50カ国から321の学術報告が寄せられていた。また参加者は200人でそのうちドイツ国が40名、中国30名、イランが25名で、イタリア、アイルランド、フランスについで、日本は7番目の15名であった。主催国はドイツであったが、他の国の参加者が160名で多く、特に中国、イランの参加者が多いのが印象的であった。
 本シンポジュームはよく組織化され、138の学術報告が16に分類された課題別に口頭発表がなされた。6部門に分類された181の学術報告が2日間に分けて、ポスターにより発表された。これらは、プログラム及びアブストラクトを含む前刷りが会場で参加者に配布された。参加者にとって個人の学術的興味とその周辺の研究動向が分かりやすい構成になっていた。
・会議における審議内容・成果
 1) 事務局引き継ぎに関して; 次期(2010-2013年)CIGR事務局を北海道大学に置くことが第50回CIGR総会で決定された。事務局長は同大学木村俊範教授である。なお、現在事務局は筑波大学にあり、同大学名誉教授前川孝昭が任期:2006-2009年の約束で事務局長を務めており、事務引継ぎとして2010年のカナダ国ケベック市の国際コングレスの開催を円滑に実施することが求められている。
  2) CIGR表彰規定の見直しの検討; 候補者選定委員会を設置し、選定の公平性と透明性の確保を図る。従来のバラバラな規定を集大成し、1つの規定に整理した案を執行役員会は理事会に提出したが、理事会では部分的に調整する事項があるとの指摘があった。次回のCIGR執行役員会で、これを再調整し、2010年のカナダ、ケベックの国際コングレスでの理事会の議を経て、総会に諮る。運用は現時点での改正案に沿って候補者を選定する。
  3) 2008年のブラジル国で開催された国際コンファランスの総会で承認された2011年に東京で開催されるCIGR 国際シンポジュウムをに関するFirst Circularの内容が理事会で承認された。CIGR分科会としても、日本農業工学会を初めとする国内の関連学会連合や学会と協力しながら万全の準備を進める必要がある。
・会議において日本が果たした役割
 1) CIGRの79年の歴史の中で、同事務局が初めて欧米を離れて、2006年から日本に移り、筑波大学名誉教授の前川孝昭が事務局長を務めた。2010年から2013年まで北海道大学に事務局を移すことが、正式に2008年開催のブラジルの国際コンファレンスで決定されたことを受け、このポツダムのCIGR執行役員会、理事会、専門技術委員会に次期事務局長をオブザーバーとして招き、2010年開催のカナダ、ケベック市で開催する国際コングレスの準備に向けた細かい打ち合わせを、カナダ側組織委員会の代表と共に主催者打ち合わせができた。この打ち合わせで日本国内の事務局の円滑な移転を可能にしていることを参加者に印象付けられた。これで8年間日本が国際農業工学会の事務局を担うことはCIGRの世界活動の中心となって活動していることになる。
  2) 今回の会議で事務局長として会長を補佐し、専門技術委員会第6セクションの組織員会との連絡・調整を滞りなく行い、国際シンポジュームを成功させた。このように、今や日本は農業工学関係の国際的中枢の役割を果たしている。また、2010年6月に開催するカナダ国ケベック市国際コングレスはカナダ農業工学会と綿密に連絡を取り合って事務局の補佐能力を高めることができると確信している。また、2011年のCIGR シンポジュームを主催することで、更に大きな影響力を世界の農業工学分野で発揮することになる。  日本の事務局が担当し、支援する国際コンファレンスは、スペイン国ヴァレンシア市で2012年7月開催される会議である。この会議はスペイン農業工学会と欧州農業工学会が組織委員会を作ることになっているが、スペインの国際会議の開催能力はCIGR側では高くないと考えているのでCIGR事務局の調整能力が問われる国際会議と捉えている。
  3) 2008年の経済危機は為替レートの大幅な変動により、運営基金のうち円建ての基金にマイナスをきたす兆候が出たので昨年11月にこれを解約しEuro建てとして、損失を最低限に抑えた。これにより、CIGRの財政の健全化が保持できた。これについては理事会、専門技術委員会に出席した理事、委員の理解と支持を受けた。また、昨年了解事項になっている財政基盤の強化案である、CIGR基金運用委員会(仮称)の設置と運用は次期事務局長の専権事項となる。この基金運用手法の確立がCIGRの財政管理能力を高めると考える。
  4) アフリカや東欧の農業工学会が結成されていない国の若手研究者の国際農業工学会への加入の希望が多くなっている。CIGRの会則では1国、1地域の学術組織を通じて加入する仕組みになっており、欠陥を突かれた内容となっているので、CIGR事務局側は新たに加入の書式を理事会に提案した。個人加入者の会費については多くの意見が出たので再度執行役員会で意見交換し、次の理事会までに最終案を提出することになった。

   
 
  第5回 国際農業工学会(CIGR)専門部会VIシンポジュウム参加者(左)  
  ポツダム市内(右)

このページのトップへ
日本学術会議 Science Council of Japan

〒106-8555 東京都港区六本木7-22-34 電話番号 03-3403-3793(代表) © Science Council of Japan