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代表派遣会議出席報告
1 会議概要
1)名 称 (和文)第15回国際経済史会議
       (英文)XVth World Economic History Congress
2)会 期  2009年 8月 3日?7日(5日間)
3)会議出席者名 斎藤 修
4)会議開催地 オランダ,ユトレヒト市
5)参加状況 (参加国数、参加者数、日本人参加者)  43カ国,1,211人,うち78人
6)会議内容

  初日の開幕セッションはDaron Acemoglu教授(MIT)の講演“The historical roots of poverty”で始まった。Plenaryセッションはこ のほか,第二日の夕方に行われたV. Shiva博士(インドIIS)の“How can humanity avoid the real end of history? The ecological imperative of changing the course of industrial civilization”,および第五日の閉会セッションで行われたBob Allen教授(Oxford)とJoel Mokyr教授(Northwestern)の討論“Why was the industrial revolution British?”とがあり,セッションには多くの出席者が集まり,つよい関心を呼んだ。
  通常のセッションは132,すべて半日を単位とし,初日の午後から第五日の午後まで設けられ,博士論文セッション3を加えると総数135に及んだ。統一論題,ないしはかつての“A”セッションのような理事会が決定したテーマは設けられず,会長および副会長セッションを除けば,すべて公募によって選ばれたものであった。その結果として,マクロからミクロまで,経済史から医療史まで,古代・中世から近未来まで,実に多様なセッションが用意されることになり,しかもその大部分が本格的な比較史を試みていた。
  今回は,日本人が組織者として加わったセッションの多かったことが一つの特徴である。私のカウントでは16に達していた。また,それら組織者のなかには若い研究者も含まれていた。これは,わが国の経済史にとって喜ばしいことである。この趨勢が今後も続くことを願っている。
   
2.会議の模様
 今回のコングレスでは,先にも記したように,初めから統一テーマが設けられていたわけではなく,またすべて公募によってセッションが選ばれた。そのため各セッションのテーマはきわめて多様性に富んでいたが,その一方では,どれも一国史の枠にとどまることなく,何らかの比較を試みていたことが目を惹いた。そのなかでも,昨今の研究動向を反映してであろうか,比較史をこえた“Global economic history”と呼ぶに相応しいセッションが少なくなかったことは特記すべきであろう。また,通常の専門領域内の研究会議やセミナーではなかなか論じられることのない,数世紀を単位とした論議も行われた。  
 
 私個人が研究報告あるいは討論者として参加したセッションは以下の5つであった。   
   Maritime trade and hinterland in eighteenth-century Asia(予定討論)
   The world in 2030. Educated guesses from a long-run perspective(深尾京司教授と共同報告)
   Industrious women and children of the world? Jan de Vries’ ‘industrious revolution’ as a conceptual tool for researching women’s and children’s work in an international perspective(報告)
   The history of global labour relations, 1500-2000(予定討論)
   Origins and early years of the International Economic History Congresses: discussion forum and oral history(ラウンド・テーブル討論)
 このうち最初のセッションは水島司教授(東大)が組織者のひとりであったセッションであり,最後から二つ目のセッションが明示的にGlobal historyを謳っていた。近世のセッション,16世紀から20世紀を通したセッション,それに2030年の経済を論じたセッションまで,またマクロ経済からミクロデータの分析まで,テーマも多彩で,会議全体の縮図といえないこともない。毎日のように何かやらなければならないセッションがあったので忙しかったが,これら以外にも覗いてみたセッションが3つほどあり,多様性を愉しんだ5日間であった。
 なお,期間中に国際経済史協会総会が開催され,新しい会長にJ.L.ファン・ザンデン(オランダ),副会長にG.フェアホフ(南アフリカ),財務担当理事にJ.ベルトーラ(ウルグアイ),事務局長にJ.バーテン(ドイツ?重任)が選任された。わが国から理事に出ていた杉原薫教授は重任され,もう一期理事を務めることとなった。
  次回開催予定
   2012年7月中旬 於 南アフリカ共和国シュテレンボシュ大学
                            

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