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代表派遣会議出席報告
1 会議概要
1)名 称 (和文) 2008世界技術者会議(WEC) 及び 世界工学団体連盟理事会(WFEO)
2)会 期 2008年12月2日?6日
3)会議出席者名 石井弓夫(日本学術会議特任連携会員)
4)会議開催地 ブラジル共和国ブラジリア市 Convention Center
5)参加状況(参加国数、参加者数) 39カ国、5200人

Ⅰ WEC2008
主催(Organizer):世界工学団体連盟 World Federation of Engineering Organizations (WFEO)、 ブラジル工学・建築・農学会議 Federal Council of Engineering, Architecture and Agronomy (CONFEA)、 ブラジル工学会連合 Brazilian Federation of Engineers’ Associations (FEBRAE)
共催(Co-Sponsor): UNESCO
メインテーマ:エンジニアリング?社会的責任を持った発展  Engineering: Innovation with Social Responsibility
(1) Reception 歓迎会 12月2日 
(2) Opening Ceremony 開会式 12月3日
(3) Plenary 全体会議 12月3日
 
 CONFEAとFEBRAE会長の開会宣言、WFEO Barry Grear会長の挨拶に続き、ブラジル共和国 Luis Inacio Lula da Silva大統領の挨拶があった。大統領は40分にわたって、ブラジルの発展はエンジニアの力によって実現していると述べ、特にクリーン・エネルギーのエタノール燃料の生産の成功を強調した。 開会式に続きPanel, Congressなどが開始された。 開会式後、ブラジル文化の夕べとしてボサノバ演奏会があった。
(4)Panel及びCongress 12月4日?5日
6Panelのテーマ
Panel 1: Capacity Building & Engineering Education
      Organizer: Mike Sanio, American Society of Civil Engineers国際部長
Panel 2: Biodiversity & Environment
      Organizer: Darrel Danyluk, Engineers Canada理事、WFEO?CEE委員長
Panel 3: Disaster Risk Management
      Organizer: 石井弓夫, SCJ/JFES WFEO?DRM委員長
Panel 4: Engineering for Development
      Organizer: Luiz Carlos Scavarda do Carmo, ブラジルProgram Committee委員
Panel 5: Energy for Sustainable Development
      Organizer: Jorge Spitalnik, FABRAE委員
Panel 6: Great Solutions on Engineering
      Organizer: Jorge Dalledonne, CONFEA委員
5Congressのテーマ
Congress A. Engineering beyond Boundaries
         Keynote Speaker: ドイツBraunshweig大Litterst教授
Congress B. Engineering: Ethics and Social Responsibilities    
         Keynote Speaker: アルゼンチン・アカデミー Bauer会員
Congress C. Innovation without Degradation    
         Keynote Speaker: PETROBRAS Gabrielli会長
Congress D. ICT for Inclusion    
         Keynote Speaker: 中国工学アカデミー Pan副会長
Congress E. Advanced Technologies: Engineering with Strategic Vision    
         Keynote Speaker: 全米科学財団NSF Bement理事
(5)日本からの発表
・小松利光 九大教授(SCJ連携会員) 
Panel3: Disaster Risk Management: “SCJ’s Proposal on Adaptations to Water ?related Disasters Induced by Global Environment Change”
・押川、橋本、塚原、小松 
Congress C:Innovation without Degradation “Flood Disaster due to Recent Abnormal Rainfall and Preventive Measures in Japan“ 
・菅和利 芝浦工大教授 
Panel 3 :Disaster Risk Management: “Investigation on Storm Surge by Cyclone SIDR in 2007 and assess the Disaster Prevention Measures of Bangladesh”
Congress A: Engineering beyond Boundaries “Investigation on Storm Surge Disaster by Cyclone SIDR”
・グエン・フンソン 建設技術研究所技師長(WFEO-DRM TG幹事) 
Panel3: Disaster Risk Management: “A proposal of Flood Risk Management Framework for Climate Change Adaptation in Japan &TOR of DRM-TG”
Congress B; Engineering: Ethics and Social Responsibilities  ”A Proposal of Flood Risk Management Framework for Climate Change Adaptation”
・土井美和子 東芝研究開発センター首席技監(SCJ連携会員) 
Congress D: ICT for Inclusion “Network Robot System as Fusion of Information Technology, Ubiquitous Technology and Robot Technology” 
・Satryo Soemantri (インドネシアからの研修派遣技術者)
Congress A: Engineering beyond Boundaries  “International Collaboration in Engineering Education”
・オオモリ マサヨシMasayoshi Omori
Congress : Social Challenges “Energy Management System and its Practice in Japan”
・Jorge Donayre
Congress B: Engineering: Ethics and Social Responsibilities “Los Vicios Ocultos en la Ejecucion Contractual”
(6)セッションの状況 (石井が関係したセッションのみ)
① 災害、地球温暖化問題
 石井が座長をしたPanel 3は災害マネジメントがテーマであったが、午前から午後に掛けて5時間にわたるセッションに60名の参加者があり、活発な質疑応答が行われ大成功であった。日本からの発表は具体的なケースについてのマネジメントという基調があったのに対し、他の3編(米)の発表は災害発生を確率的事象として取り扱うというなどの点に特徴があり、相互に学ぶところが大きかった。
② 情報化問題
 土井連携会員が情報化とユビキタスについて発表。多数の若く熱心な参加者があった。(詳細は土井会員の報告書参照)
③ エネルギー問題
 ブラジルがバイオ燃料としてサトウキビからのエタノール生産に成功していることを反映して、多数の参加者があった。   
 注:市中のガソリンスタンドにはガソリンとアルコールが同時に販売されていた。価格はブラジリア市内で、ガソリンが2.4?2.5レアル/l(当時の換算レートは1レアル=50円)、アルコールが 2レアル/l とガソリンよ2割安いが、燃費も8掛けなので、実質価格は同じである。アルコール燃料を推進するため、自動車税をガソリン車より安くする政策をとっている。
 ナイジェリアから同国は石油生産国ではあるが、E-10というガソリンの10%をエタノールで置換する政策を取り、それが成功しつつあるとの報告があった。原料はアフリカでは主食のキャッサバであるがアメリカのトウモロコシ原料よりは効率が高いと報告された。 キャッサバはサトウキビ原料以上に食料として重要であることが軽視されているとの印象である。
 ナイジェリアのバイオエネルギーには中国の資金と技術者が全面的に加わっているとも報告された。
(7)閉会式 12月5日
 WFEO、CONFEA、FEBRAE、女性技術者会議などの会長によって ブラジリア宣言「社会的責任を持った開発のための技術の進歩」 The Brasilia Declaration: Engineering and Innovation for Development with Social Responsibility が発表された。
ブラジリア宣言
 技術がすべての進歩の推進者であること
 今回の経済危機を乗り切るには、社会的責任を持った技術の進歩が不可欠である。
 そのためには
 人々と若い世代に技術の重要性を認識させること
 最新技術をもった技術開発をすること
 技術の利用と発展をはかること
 女性と若い技術者の参入をはかること
 知識格差解消のための国際的協力をはかること
 が重要である。 われわれWEC2008参加者は上記の目的へ向かって行動するとともに、
 WFEO, UNESCOの会員、関連する国、国際組織の参加を求めるものである。
 さらに各国政府とその機関には上記行動を援助すること、Millennium Development Goals達成のための技術教育、研究・開発、継続教育の促進を求めるものである。
(8)今後のWFEO関連の国際会議 
 2009年11月2?6日 Kuwait総会・理事会 Kuwait
 2010年10月18?20日 World Engineers Week・理事会 Buenos Airesアルゼンチン
 2011年9月5?7日 WEC2011・理事会 Geneva スイス
 式典終了後、WFEO2009年11月総会の開催国であるKuwait代表団から、ビデオによる同国の状況の紹介があり、また次のWEC2011主催国であるスイスから駐ブラジル大使の挨拶とビデオの上映があった。 閉会式後、ブラジル文化のショウがあった。
(9)展示会 ExpoWEC2008:
 Energy for the Futureのテーマに沿い、新エネルギー、バイオエネルギーに関する展示が中心であった。
(10)ポスト・カンファレンス・ツアー
会議終了後、ブラジル各地へのツアーが出発した。
(11)WEC2015招請と今後の国際会議への意見
① WEC2015招請
 2015のWECを日本に招請する件について、WFEO幹部に非公式に打診した。全員が好意的な反応であった。特に事務局長からはWEC2011ジュネーブの立候補文等の提供をうけ、またスイス代表も協力を約してくれた。(付属資料?1、2、3) 現在、ルーマニアとカナダが関心を示しているとのことである。 立候補するとすれば3月16日からパリの本部で開かれる執行理事会Executive Boardに非公式に伝え、11月のKuwait理事会に正式に立候補するタイミングが望ましい。
② 国際会議運営の参考点
1.WEC2008ブラジリアは5200人参加の国際会議にしてはロジステックスがきわめて貧弱で、ホテルの手配、会場への交通、登録受付などに混乱が多かった。公共交通機関としてバスしかないため特に開会式当日は、車・タクシーで周辺が大混雑した。その上、主賓の大統領が2時間近くも遅れてきたため、会議の進行が混乱した。
2.公用語が英語とポルトガル語であるのに、英語での連絡が無かったり会場整理員に通じなかったりした。これも混乱を大きくした。
3.Proceedingsが配布されなかった。セッションの発表者・参加者への会場、時刻の連絡が不十分で混乱が大きかった。
4.問題はあったとはいえ、ブラジルが政府と学界を挙げて会議の招請から組織・運営までを行ったことは高く評価される。

Ⅱ WFEO Executive Council 理事会 12月1日、2日 ブラジリア
各国代表理事、国際機関代表理事(UNESCO, FIDICなど)30名が参加して開催。
(1)理事会の審議
 名誉理事会のメンバーを審議
 総会委任状、賛助会員資格について規約改正案を審議
 会長の活動報告を承認
 2007年12月のニューデリー総会後の活動を検討し、おおむね順調に推移している事を確認した。
 事務局強化の方策として事務局パリからチュニスに移す件は継続審議となった。石井は ?.交通不便 ?.国際機関との連絡が不便 の理由で反対を表明。
(2)委員会報告
 下記の各委員会委員長より活動報告があった。
 Information and Communication
 Education and Training
 Engineering and the Environment
 Technology
 Capacity Building
 Energy
 Women in Engineering and Technology
 Anticorruption
 中では Engineering & Environment CEE 技術・環境委員会が、気候変動、開発、災害、オリンピックによる環境破壊問題について活発に活動(カナダと日本が中心)した報告があった。また日本が中心のDisaster Risk Management Task Group DRM-TGが活発な活動をしている事が確認された。
 また女性技術者委員会は結成されたばかりであるが、フランスを中心に活発な活動を開始している。反汚職委員会も活発に活動している。
 下記の特別委員会報告があった。
 Awards Committee
 Communication (information about the base support of the Tunis Office)
 Development of WFEO membership
 Coordination between Standing Committees
 Terms of reference for requirements for hosting WFEO events
 国際機関としてUNESCOが気候変動を重要視していると報告。
(3)WFEO関連国際会議
 準備状況について報告があった。
 WFEO 2009総会 クウェート
 WEW 2010 アルゼンチン 同時開催のWFEO理事会
 WEC 2011 スイス

Ⅲ WFEO委員会
(1)Engineering & Environment CEE 技術と環境委員会
 Darrel Danyluk(加) CEE委員長を議長とし、委員約20名が出席した。UNESCO, FIDIC代表も参加した。日本からは石井委員、グエンが出席。幹事は David Lapp(加)
・Grear会長から 気候変動が最重要であるとの指示があった。
・Danyluk委員長より前ニューデリー委員会後の活動報告があった。中で、UN Com. on Sustainable Developmentとの協議により、WFEO?CEEの重要な役割について合意し今後年2回の会合を持つことに合意したこと、News Letterが発行されたこと、初めてWebinar(ネット上の国際セミナー)を行い成功したこと、Webinarの費用は数百ドルで済んだことが述べられた。
・Webinar(インターネット・ウエブを用いた国際会議)におけるカナダの発表が再現された。テーマは「気候変動による危険度増大と適応」で担当はカナダ・ニューファウンドランド州政府職員。
・石井委員より、CEEのDisaster Risk Management TGの活動報告書を提出。・・2008年9月に土木学会と国際シンポを共催した。TGのガイドライン案を作成した。NLに活動状況を掲載した。等
(2)Anti-Corruption CAC 反汚職委員会
 汚職がますますはびこっていて、Transparency International の調査によると、関連金額は全アフリカのGDPの20%、5000億ドル(50兆円)に達していると報告があった。 1日午前に反汚職員会Committee on Anti-Corruption CACがあったが、石井委員は環境委員会の方に主として出席したので、CACの方は短時間だけ出席した。CACの席上、下記のように日本の学会の中でも倫理問題に中心的に取り組んでいる土木学会JSCEの活動について報告した。
1.JSCEは1914年の発足以来Integrityを重視した活動をしてきた。Transparency Internationalの年次報告で日本が17位?20位という上位にあることにもいささか貢献している。
2.特に2004年には、JSCE会員の倫理を向上するために、倫理についての指針の文書と倫理教育を含むCPD文書を定めた。この二つの文書はWFEO本部に提出したが、残念ながら本部からの反応はなかった。今日あらためてその文書2通をKamel Ayadi議長(前WFEO会長)に提出する。・・2資料を提出。・・
3.さらに2007年には土木学会会長を委員長とする倫理社会規範委員会を設置し、会員の倫理堅持を図っている。幸い、目下のところこの委員会の審議対象となるような事例は発生していない。 (3)Disaster Risk Management Task Group
 日本より、石井委員長、グエン幹事、小松委員(九大)、菅委員(芝浦広大教授)、アメリカよりAng委員(USC教授)、Majumdar委員(National Science Foundation理事)が参加。水関連のTORについては異議なく承認。地震関連については道路構造物の耐震補強を中心とする原案が狭すぎるとして修正する事になった。アメリカの委員は、災害の確率的発生について取り上げるべきだとも主張。

付 World Engineers Week 2010 in Argentina: 世界エンジニア週間2010
   International Advisory Council: WEW2010?IAC 国際顧問委員会
   11月30日ブラジリア、12月7,8日 ブエノスアイレス

 Kamel Ayadi委員長(前WFEO会長)が議長となり、アルゼンチン側からMario Telichevsky WEW2010実行委員長、Conrad Bauer実行委員、Carlos Ballester実行委員、Carina Carrasco書記が出席。準備状況について説明を受けた。WEC2008の後ブエノスアイレスに移動して会場予定地を視察した。
 IACでは下記についてさらに充実を図る事との意見がでた。
・参加者募集のためのPromotionが不十分である。(特にアジアにおいて)
・500m$とされている財務計画を早く立てること。
・テーマの"Technology, Innovation and Production for Sustainable Development”を早く具体化すること。
・魅力的なKeynote Speakerの選定 たとえばIPCCパチャウリ事務総長、オランダ・皇太子など。
・Logisticsを充実すること(ブラジリアの経験を生かすこと)。
・魅力的なツアーを用意すること。
などが決まった。
 なお石井委員は会議の円滑な運営に関する意見書を提出した。(付属資料?4)


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