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代表派遣会議出席報告
1 会議概要
1)名 称 (和文) ICSU第29回総会
      (英文) ICSU 29th GENERAL ASSEMBLY
2)会 期 10月21日National Member’s Forum(Union Member’s Forum)
       10月22日?24日General Assembly
       10月25日Executive Board (new member)
3)会議出席者名 唐木英明副会長、黒田玲子第3部会員、土居範久連携会員、星元紀連携会員、綱木事務局次長ほか
4)会議開催地 マプト(モザンビーク) 会場名:International Conference Center ‘Joaquim Chissano’
5)参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)  参加国56カ国 参加者数 計273名(日本人参加者8名うちSCJから7名)
6)会議内容
・日程・議題

10月21日(火) National Member’s Forum (同時にUnion Member’s Forumを開催)
(総会前日にNational Memberによる会合が開催された。)
1. National Member involvement in new interdisciplinary initiatives
 ・Hazards(Howard Moore)
 ・Ecosystem Services(Hal Mooney)
 ・World Data System(Ray Harris)
2. Involvement of National Members with ICSU Regional Offices
 ・Asia(Nordin Hassan)
 ・Africa(Sospeter Muhongo)
 ・Latin America(Alice Abreu)
3. Global Environmental Change and Earth Systems Science(Leah Goldfard)
4. Proposed ICSU Dues Structure(Roger Elliott)
5. Strengthening Social Sciences(Anne Whyte)
6. Developing the next ICSU Strategic Plan(Carthage Smith)
7. National Members business meeting

10月22日(水) General Assembly (1日目)
1. Adoption of the Agenda (President)
2. Appointment of Resolutions Committee and Tellers (President)
3. Secretary General’s Report (Secretary-General)
4. Reports from Union and National Members' Fora (Bryan Henry and Sergio Pastrana)
5. Implementation of the Strategic Plan (Thomas Rosswall)
6. International Polar Year (IPY) (David Carlson)
7. Integrated Research on Disaster Risk (Gordon McBean)
8. Ecosystem Change and Human Well-being (Hal Mooney)
9. Health and Well-being in the Changing Urban Environment (Pierre Ritchie)
10. Presentations by candidates for Officers

10月23日(木) General Assembly (2日目)
1. Reviews of Global Environmental Change Programmes
 ・Introduction (Thomas Rosswall)
 ・Earth System Science Partnership (ESSP) (Lidia Brito)
 ・International Geosphere-Biosphere Programme (IGBP) (Coleen Vogel)
 ・World Climate Research Programme (WCRP) (Catherine Cesarsky)
 ・International Human Dimensions Programme on Global Environmental Change (IHDP) (Leah Goldfarb)
2. Scientific Committee on Problems of the Environment (SCOPE) (Khotso Mokhele)
3. Committee on Freedom and Responsibility in the conduct of Science (CFRS) (Bengt Gustafsson)
4. Enhancing the Involvement of Social Sciences in ICSU (Michel Denis)
5. Election of Officers (President)
6. Report from Strategic Committee on Information and Data (SCID) (Ray Harris)
7. Reports from Regional Offices
 ・Africa (Gabriel Ogunmola)
 ・Asia and the Pacific (Anupam Varma)
 ・Latin America and the Caribbean (Jose Antonio de la Pena)
8. Policy Committee on Developing Countries (PCDC) (Hernan Chaimovich)

10月24日(金) General Assembly (3日目)
1. Report on other strategic activities and planning for the next Strategic Plan, 2012-2017 (Khotso Mokhele)
2. Report on Dues Structure (Steve Thompson) and Recommendations from Executive Board (Roger Elliott)
3. Reports of the Treasurer (Roger Elliott) and Chairman of the Committee on Finance (Bryan Henry)
4. Election of Ordinary Members of Executive Board (President)
5. Proposals for new ICSU Members (President)
6. Incoming Presidential Address (Catherine Brechignac)
7. Adoption of Resolutions of the General Assembly (Chair, Resolutions Committee)
8. Date and Place of 30th and 31st General Assemblies (President)
9. Any Other Authorized Business (President)

10月25日(土) Executive Board(New Member)  

・会議における審議内容・成果
10月21日(火) National Member’s Forum
 ・ 総会前日に開催された国会員による会合(同時にユニオン会員による会合も開催)。
 ・ 総会における議題(災害危機、エコシステムサービス、世界データシステム、グローバル環境変化および地球システム科学)を中心に国会員として議論。この他、3つの地域事務所 (アジア、アフリカ、ラテンアメリカ)から活動報告が行われた。
 ・ 分担金の算定方法を改めGDPに基づいて行う及びこれに伴う投票権の加重は行わないとする分担金見直しにかかる議案について、日本学術会議の唐木副会長から、財政規律保持の観点から、財政支出を伴う議案については、投票権の加重を行うべきとの意見を表明した。また、同趣旨の意見が英米からも表明された。
 ・ ビジネスミーティングにおいて、ICSU選出手続きにより、国代表の常任理事候補10人から総会での常任理事選出に向けての候補者下記8人を選出した。 Fu Congbin(中国), Maurizio Laccarino(イタリア), Carlos Machili(モザンビーク), Joseph O.Malo(ケニア), Guy F.Midgley(南ア), Michael Mulvany(デンマーク), Sergio Jorge Pastrana(キューバ), Adul H.Zakkri(マレーシア)

10月22日(水) 総会 (1日目)
 ・ 総会の議題の承認、決議委員会委員、投票数集計担当者の指名が行われた。
 ・ 前日開催された国会員及びユニオン会員による会合の結果がそれぞれの代表者から報告された。
 ・ 前回総会(2005, 中国・蘇州/上海)で承認されたICSU第1次戦略計画(2006-2011)に基づく活動実績の報告が行われた。
 ・ IPY (International Polar Year:国際極年)は前回総会で新たな国際プログラムとして承認され、WMOとの共同により2007年から実施された。60カ国から10,000人以上の科学者の参加を得て、4億ドルを超える研究資金がプログラム期間中充てられた。今後IPYの成果をさらに確実なものとするようWMOと共同して活動していくこと、ICSUの極問題への活動を持続していくため、他のICSUの関連組織(SCAR,IASC等)とともに検討していくことが承認された。
 ・ 自然災害の分野に関して「自然及び人間に起因する環境危険・災害」計画グループを設置し、これまで多分野にまたがる検討を鋭意重ねてきた。これに係る最終報告書が理事会等に提示し検討に付され、第29回総会に提出された。この結果、10年間を期限とする、自然及び人間に起因する環境危険・災害(IRDR)に関する学際的プログラムを立ち上げること、IRDRは他の組織と協議を踏まえつつ学際的組織として設置することが承認された。
 ・ ミレニアムエコシステム評価はエコシステムの変化が大きな危険をもたらすとの懸念から、4つの生物多様性に関する協議会が提案し、2000年に国連(アナン前事務総長)に委任された。エコシステム変化及び人間の福祉に関する10年間を期限とする新たな学際プログラムを立ち上げること、当該プログラムは学際的組織(Interdisciplinary Body)、会員、UNESCOなどとの協議を図りつつ科学委員会の設置を行うことが承認された。
 ・ ICSUは28回総会において、新たな臨時Scopingグループを設置し、検討を重ね新たなプログラム「システム分析アプローチ ? 変化する都市環境における健康と福祉」を立ち上げた。その後同グループは科学計画・評価委員会(CSPR)によって計画グループに常設化された。新たな健康と福祉に関する新たなイニシアティブの進展、科学ユニオン及びIIASAとのパートナーシップの重要性を認識し、理事会に計画の支持継続を要望することが承認された。
 ・ なお、上述の2つのプログラム「エコシステム変化及び人間の福祉」に関する新プログラムと、「システム分析アプローチ ? 変化する都市環境における健康と福祉」についての新プログラムについては、一部重複する内容を含むこともあり、議長提案により、関連メンバーからの意見を伺う機会が設けられた。主な意見は以下のとおり:
 ・ いずれも政策立案側との関わりが必要である。
 ・ 福祉(well-being)には、医学ばかりでなく衛生や栄養という考え方も必要。
 ・ 二つのプログラムは、いずれも人口・移民問題や社会問題に密接に関わるプログラムである。
 ・ 二つのプログラムは、いずれも社会科学(Social Sciences)との連携が必要。
 ・ 二つのプログラムは互いの連携を密接に図っていくことで、重複部分をうまく調整することが必要。

10月23日(木) 総会 (2日目)
 ・ 世界環境変化プログラムのレビューの進捗状況が発表され、科学計画・評価委員会(CSPR)は引き続きフォローアップを続けることが承認された。また、地球システム科学パートナーシップ(ESSP)をICSUの学際的組織(Interdisciplinary Body)と見なすことが承認された。
 ・ 環境問題に関する科学委員会(SCOPE)については、2年以上の適切な経過措置期間の後、ICSUの学際的組織(Interdisciplinary Body)と見なさないこととする案が承認された。
 ・ メンバーとしての科学の在り方における自由と責任委員会(CFRS)の活動が報告された。CFRSの活動案の実施を支援することが承認された。科学における自由、責任、及び(科学の)普遍性についての小冊子作成についてもICSUメンバーが支援してゆくことが承認された。
 ・ ICSU戦略計画の実施の際には社会科学系の研究者も関与させるべきであることが示された。特に社会科学部門を擁する国会員は、ICSUの企画委員会及びレビュー委員会にどのような社会科学部門を関連させるべきかについてICSUを支援することが示された。特に国際社会科学評議会(ISSC)との協力体制を緊密にし、第2次戦略計画(2012年?2017年)策定の際にもISSCの意見を考慮するものとする等、社会科学的見地をICSUに取り込ませるという方針が承認された。
 ・ 役員選挙が行われ、日本学術会議の黒田玲子第3部会員がICSU副会長(External Relations)に選出された。なお、これは日本学術会議として、1963年の茅誠司会長がICSU副会長に、1999年の吉川会長がICSU会長就任に続くものであり、日本人女性科学者としては初のICSU副会長就任となる。任期は3年で、事務総長及び財務担当のみ1回の再任が可能である。
 ・ なお、今回の役員選挙の結果は下記のとおりである。
役員名 名前 国(地域)
次期会長(President-Elect) Yuan-Tseh Lee 台湾
副会長(科学計画・評価担当:Scientific Planning and Review) Kari Raivio フィンランド
副会長(渉外担当:External Relations) 黒田玲子 日本
事務総長(Secretary-General) Maurice Tchuente カメルーン
財務担当(Treasurer) Hans Ott, condensed スイス
     
今期会長(2008-2011) Catherine Br?chignac フランス

 ・ 第28回総会での決議を受け、ICSUは情報及びデータに関する特別戦略委員会を発足させ、グローバルな観点から利用可能な科学的データと情報に関連する問題を議論してきており、これに係る最終報告書を(提言を含む)本総会にて提案し承認された。今後ICSUは分野横断型の新体制(ICSU-Word Data System)を立ち上げ引き続き本件の推進に努める。併せて期限限定で情報とデータについての特別戦略・調整委員会を立ち上げる。各ICSUメンバーについても、データ及び情報に関する委員会の発足が促された。
 ・ 3つの地域事務所(アジア、アフリカ、ラテンアメリカ)から活動状況等が報告された。各地域事務所とも策定した計画の実施について成果が報告された。アラブ地域の地域事務所立ち上げについては実現に向けた努力を継続していく。国、ユニオン等のメンバーは各地域事務所の活動を支援することが促された。
 ・ ICSU本体(理事、CSPR、事務局)側と各地域事務所との間の連絡を密にし、戦略計画に一貫性を持たせる目的で、両者は年次ベースで会合を開くことが承認された。次期戦略計画案作成にあたり、CSPRは開発途上国の状況を踏まえた上で、科学技術面での今後のICSUの役割を考慮すべきとされた。地域事務所の活動が活発であることから、開発途上国についてのポリシー委員会(PCDC)はその活動の必要性が低くなり、しばらく活動休止とすることが承認された。

10月24日(金) 総会 (3日目)
 ・ 次期(第2次)戦略計画(2012年?2017年)について、エネルギー関連の活動を盛り込んだ素案を作成の上、次回の第30回総会で承認できるように準備するという段取りが承認された。
 ・ 第28回 ICSU 総会での決定を受け、分担金構造評価に関するワーキンググループを発足させ、ICSU分担金のあり方について議論を行った。この結果理事会での検討結果を本総会で提案し、以下のとおり提案事項が承認された。
 ・ なお、分担金見直しの結果、分担金額の増加が想定される日本学術会議や米英等から加重投票権の可能性を残す提案が出されたため、投票権の加重は行わないとの決議は取り下げられた。これにより、将来的に分担金額の多寡による投票権の加重の可能性が残された。
 ・Raw GDPに基づくモデルに基づいて分担金金額を決定する。
 ・現行の51区分 (band) に代わり 10 区分を用いる。
 ・1000ユーロの最低義務拠出額の支払いを必須とする。
 ・最高バンド金額に上限(Cap) を設定する(現行では米国の分担金に適用)。
 ・ICSUへの貢献はIn-kindによる形(現金以外の貢献)でもよいことを周知させるとともに、In-kindでの貢献を促す。
 ・ユニオンの分担金については4区分を適用する。
 ・ユニオンに適応すべき区分は、分担金に応じて決定される。
 ・準科学会員 の分担金額は500ユーロのままとする。
 ・新規分担金決定方法では各メンバーについてはより低い方を適用するものとするが、自主的に高い区分での分担金額を支払うことが推奨される。
 ・会員については、自主的に高額の分担金区分を利用してもよい。
 ・国会員、ユニオン会員 および 準会員 については2012年から新規分担金構造を適用する。
  (これに関しての主な議論は以下のとおり)
 ・分担金算出用の数式にGDP以外の案件も盛り込む形での分担金金額算出方法の考案(UN方式の参照、Strategic Planの結果の考慮等)(中国その他)。
 ・Voluntary Paymentについての上限値の導入を提案。

 ・ 財務担当理事及び財務担当委員会から2005年?2007年の会計監査報告書がメンバーによる電子投票で承認されたことが報告され、財務担当委員会が解散となった。今後は会計関連の承認についてはメンバーによる電子投票となることが報告された。2008年及び2009年の予算額が示され、2010年?2012年の予算案が承認された。なお、2010年?2012年の予算案については、本総会の関連決議項目を考慮した上で、毎年3%のインフレ率を調整済み。
 ・ 常任理事の選挙が実施され、下記のとおりユニオンメンバーから推薦された8名のうちから4名、ナショナルメンバーから推薦された8名のうちから4名が選出された。任期は3年で、1回の再任が可能である。

 ユニオンメンバー:
名前 ユニオン名称 国(地域) 初当選年
Bryan Henry IUPAC カナダ 2005
Dov Jaron IUPESM 米国 2008
Bruce Overmier IUPsyS 米国 2008
Uri Shamir IUGG イスラエル 2005

 ナショナルメンバー:
名前 国(地域) 初当選年
Fu Congbin 中国 2005
Maurizio Iaccarino イタリア 2008
Sergio Pastrana キューバ 2005
Abdul Hamid Zakri マレーシア 2008

 ・ IUIS (International Union of Immunological Societies: 国際免疫学連合※)が新規ユニオンメンバーとして承認された。4S (Society for Social Studies for Science:科学社会研究学会)が新規準科学会員として承認された。
 ※2010年総会を日本にて日本学術会議と共同主催する予定。
 ・ 今期新規会長となるCatherine Br?chignacの就任スピーチが披露された。
 ・ 決議委員会委員長より、総会決議についてのガイドライン及び第28回総会の決議内容が報告され、承認された。
 ・ 次回第30回ICSU総会は、2011年にイタリア(ローマ)にて開催されること、また次々回第31回ICSU総会は、2014年に台湾で開催されることが承認された。

10月25日(土) 理事会
 改選された新メンバーによる理事会が開催された。なお、会議クローズドで、理事メンバーのみの参加が認められ、日本から黒田新副会長が出席した。

 


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