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代表派遣会議出席報告
1 会議概要
1)名 称 (和文)第38回海洋科学研究委員会執行理事会
      (英文)Scientific Committee on Oceanic Research (SCOR) 38th Executive Committee Meeting
2)会 期 2007年8月26日~28日
3)会議出席者名 蒲生 俊敬 東京大学海洋研究所 教授
4)会議開催地 ベルゲン(ノルウェー)Radisson SAS Royal Hotel   
5)参加状況(参加国数、参加者数、日本人参加者)15か国、36名,うち日本人1名前後
     
6)会議内容
・日程および会議の主な議題
8月26日:開会, 2006年総会以来の主要な出来事と財政状況のまとめ。来年度役員選挙の予告。ワーキンググループ(WG)の解散と現在活動中WGの状況について報告と審議。新規WG提案の評価と採択。2008年度のSCOR50周年記念大会のプログラム案の説明。
8月27日:現在活動中の大規模海洋研究プロジェクトに関する報告と審議。国際海洋研究計画に関するSCORサミットの報告と議論。Thomas Rossby(ロードアイランド大)による学術セミナー。海洋の炭素循環プログラム,途上国対応プログラム,および政府間組織・非政府間組織に関する現況報告。
8月28日:海洋に関する連携組織プロジェクトの動向紹介。SCOR事務報告(加盟国の状況、ウェブサイト更新とニュースレター発行状況,ワーキンググループの分野バランス状況など)。財務委員会から予算状況報告。2009年以後の執行理事会・総会開催候補地について提案。
・会議における審議内容・成果
 現在活動中のSCORワーキンググループ(WG)の状況について報告と評価がなされた。5件のWGs(Nos. 116, 119, 120, 121, 123)の終了・解散が承認され,10件のWGsの継続(Nos. 111, 115, 122, 124~130, )が承認された。2008年度発足の新しいWGとして,「鉄肥沃実験の総括:データ取り纏めとモデリング」の1件が条件付きで採択された。 SCORの活動を一層促進するため,加盟国の年会費(分担金)は,カテゴリー(I~V)にかかわらず2007年度より一律,前年度の3%増とすることが昨年決められたが,2008年度についてもこれを継続し,さらに2009年度からは5%増とすることが了承された。
・会議において日本が果たした役割
 新たなWG申請(3件)について,予め国内SCOR小委員会(メール開催)において内容を検討した。その結果を今回の会議において詳細に報告し,WG申請の評価と採択のプロセスに貢献した。結果的にも,我が国が最も高い評価を与えたプロポーザルが採択されることとなった。
・その他特記すべき事項
 SOLAS SSCから最近出されたPosition Statement(生物ポンプの活性化を目論む海洋への大規模な鉄散布は,長期的に見て多くのリスクを伴うので,行うべきではないとの主張)が会議中に紹介され,注目を集めた。
2.会議の模様(会議のより詳細な状況,宿題,次のステップ,次回開催等)
 ベルゲン大学のノルウェーLOCメンバーにより,ベルゲン市の中心付近にある世界遺産の古い町並みに隣接するRadisson SAS Royal Hotelの会議室が周到に準備された。会議中ほとんどトラブルなく,机のスペースも十分広く,快適な環境で会議が進行した。ホテル内は会議室・居室とも無線LANが整備され,常時インターネットに接続できた。
 会長3年目のBjørn Sundbyの司会は適切で,議論に十分な時間をとり,参加者が納得する結論に到達していた。また会議のアジェンダと質疑内容はSCOR事務局によって事前に要領よく取りまとめられ,午前と午後に1回ずつのコーヒーブレークを挿んで,会議はほぼスケジュール通りに進行した。
 8月26日は開会のセレモニーとして,ノルウェー開催代表者挨拶と参加者の自己紹介に続き,最近1年間に逝去したSCOR関連の著名な海洋学者に黙祷が捧げられた。アジェンダの確認,SCOR会長(Bjørn Sundby)挨拶、およびSCOR事務局から2006年の総会(コンセプシオン)以降の主要な出来事と財政状況のまとめがなされた。来年度は会長・副会長など役員選挙のあることが予告された。
 現在活動中WGの状況について報告と審議がなされた。5件のWGs(Nos. 116, 119, 120, 121, 123)は当初の目的を達成したとして終了・解散が承認された。10件のWGsの継続(Nos. 111, 115, 122, 124~130, )が承認された。引き続き新規WG提案(3件)の内容審査が時間をかけて行われた。各国の国内SCOR委員会による評価が一通り紹介された後,審議がなされた。その結果,2008年度発足の新しいWGとして,「The legacy of in situ iron enrichment: data compilation and modeling(鉄肥沃実験の総括:データ取り纏めとモデリング)」の1件が条件付きで採択された(Terms of referenceのうち,データのモデリングに関する部分は再提案を求める)。日本からWGのfull memberとして武田重信(東大院農)が参加予定。全般に,過去2?3年以内に発足したWGはめざましい成果を上げている一方,それ以前のWGは成果報告とりまとめの遅れなどトラブルが多いことが指摘された。WGの成果公表には,電子出版(pdfファイル)と印刷出版(モノグラフなど)が混在している。両者にそれぞれ利点があり,後者は費用かかるが実体あることも重要なので,一概にどちらがよいとは言えないとの議論があった。
 2008年度のSCOR総会は,50周年記念大会として行われる予定であることが紹介され,プログラム案の説明があった。
 夜は,ノルウェーLOCの主催で,世界遺産エリア内にある歴史のあるシーフードレストランでレセプションが開催された。
 8月27日は,現在実施中の大規模海洋研究プロジェクト(GLOBEC, GEOHAB, IMBER, GEOTRACES, SOLAS)の動向についての報告と質疑応答が時間をかけて行われたGLOBEC は,2009年の終了にむけて取り纏めが順調に進んでいる(日本からSSCメンバーとして桜井泰憲(北大院水産)が参加)。GEOHAB は,NSFやNOAAからもファンドを受け,そのコアとなる研究プロジェクトを順次立ち上げつつあり,また新たにAsian-GEOHAB組織化も進んでいる(日本からSSCメンバーとして古谷研(東大院農)が参加)。 IMBER(海洋生物地球化学・生態系統合研究)は,GLOBECとの合体に向け,ますます活動度を高めつつ,順調に成果を上げている。IMBER/SOLAS, IMBER/LOICZ(上海で開催のOpen Science Meeting "Continental Margins")など,他プロジェクトとも連携活動も推進している(日本からSSCメンバーとして齋藤宏明(東北水研)が参加)。GEOTRACES(微量元素・同位体による海洋生物地球化学研究計画)は,計画実行の初期段階としてきわめて多忙な年に突入した。太平洋,大西洋,インド洋の観測計画立案,分析の相互検定とモデリング,およびこれらを総括するSSC会議と続く(日本のSSCメンバーとして蒲生俊敬(東大海洋研)と張勁(富山大理)が参加)。SOLAS(海洋大気間物質交換研究計画)は,円熟期に入り,きわめて活発な情報発信(2006年12月,ブラッセルでのOceanic DMS Models Workshop,2007年3月,厦門でのSOLAS Open Science Conference; 2007年10-11月,コルシカ島でのSOLAS Summer Schoolなど)を行いつつある。グローバル鉄循環に関するBoyd et al.によるScience論文公表はIGBP&SOLASの大きな成果として評価される。また,SOLAS/INI (International Nitrogen Initiative) Workshop(2006年11月,英国Univ. East Anglia)において,大気から海洋への人為的な窒素フラックスの増加が海洋の一次生産や炭素循環にどのような影響を及ぼすのか,より定量的に把握する必要性が指摘された(日本のSSCメンバーとして,植松光夫(東大海洋研)と武田重信(東大院農)が参加)。
 国際海洋研究計画に関するSCORサミット(2006年12月ロンドン開催)についての報告と質疑応答がなされた。
 午後の最初に,Thomas Rossby教授(ロードアイランド大)による,商用船ADCPによる海洋の微細構造観測に関するセミナー(Sustained ocean observations from merchant marine vessels)が行われ,活発な質疑応答があった。
 引き続いて,IOCCPなど海洋の炭素循環に関するプロジェクトの現状紹介,POGOなど途上国対応プログラムの状況,および政府間組織(IOC, GESAMP, PICESなど)と非政府間組織(ICSU, WCRP, IGBP, SCAR, IPY, ECORなど)に関する報告があった。
 8月28日は,連携組織プロジェクト(IABO, IAMAS, IAPSO, IACS, InterMARGIN, CoML, IMAGES, AOSB, iAnZone, InterRIDGE, IOCCG, POGOなど)の動向が紹介された。様々な形で,海洋に関する多くの共同連携研究が進みつつあり,喜ばしい状況と評価された。学際的な連携を推進する意味で,IAMAS, IAPSO, IACSのJoint Assembly(2009年11月,モントリオール)のような同時開催の動きは大いに評価された。
 SCOR事務報告(加盟国の状況、SCORウェブサイト更新とニュースレター発行状況,ワーキンググループの分野バランス状況など)がまとめてなされた。物理・生物・化学・地学の各分野に渡ってWGが動いているが,各国の国内SCOR委員会はなお一層イメージを広げて斬新なWGの立案に努力すべきことが指摘された。
 財務委員会からSCORの予算状況について報告があった。順調に発展を続ける海洋の大型研究(GLOBEC, SOLAS, IMBER, GEOTRACES, LOICZ等),SCORワーキンググループ活動、および連携プロジェクト等を適切にサポートし、かつ発展途上国への科学振興を進める上で、予算の増額を必要としている。2008年度の年会費は昨年に引き続き,前年度の3%増となる(カテゴリーI~V(日本は最高カテゴリーV)の5段階の全ての国が一律3%増となる)。しかしさらに諸経費が高騰しつつある現状に鑑み,2009年度の会費は,すべてのカテゴリー国について2008年度会費の5%増にすることとなった。
 分担金の支払いという点では,日本は最上位のカテゴリーVに属し、米国・ロシアとともに最高額を提供している。その割合から見ると,大型プロジェクトやワーキンググループへの日本の研究者の参画はまだ十分とは言えない。今後,日本からさらにSCOR活動への積極的参加が望まれる。
 2009年以後の執行理事会・総会開催地について提案の呼びかけがなされ,それに応じた中国より2009年の開催を厦門で行いたいとの提案が出された。
 なお,SCOR執行理事会終了後,SCORメンバーは,8月29日?31日にかけてベルゲン大学で開催されたopen science conference "Polar Dynamics: Monitoring, Understanding, and Prediction"のice breakerパーティーに招待された。すでに始まっているポスター会場での議論や,ワインを飲みながらの懇談を楽しんだ。
 次回開催予定 2008年10月末(ウッズホール,米国)


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