国際活動

日本学術会議は、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、世界の科学者コミュニティと連携して学術の進歩に寄与するため、主に次のような国際活動を行っています。

1.世界の学術団体との連携

(1)Gサイエンス学術会議

平成17年7月に英国のグレンイーグルズで開催されたG8サミットにおける主要議題であった「気候変動」及び「アフリカ開発」に関して、同年6月、G8各国及び関係国の学術会議が共同で声明を発出したことが、G8サミットの議論ひいては声明に大きな影響を及ぼしました。
G8各国の学術会議では、その成果を受けて、今後とも、毎年のG8サミットの議題や地球規模で科学者が取り組むべき問題に関して、共同で政策提言(共同声明)を発出することを目的とし、G8開催国で各学術会議の代表が一堂に会して議論をしていく枠組みを構築する方向で一致し、「G8学術会議」としての活動が開始されました。
毎年、サミットの開催国を主催アカデミーとして取りまとめられる共同声明は、参加各国の首脳に報告され、日本では日本学術会議会長から内閣総理大臣に直接手交しています。
当初「G8学術会議」という名称でスタートしたこの活動ですが、参加アカデミーからの提案により平成24年以降、会議名称が「Gサイエンス学術会議」に変更され、現在まで活動が続いています。

(2)サイエンス20(S20)

平成29年、ドイツの科学アカデミーであるレオポルディーナが、同国でのG20サミット開催に際して、G20サミットに向けた科学的な政策提言を行うための会議の開催をG20各国の科学アカデミーに呼びかけたことが契機となり、サイエンス20(S20)が発足しました。
S20では、毎年、サミット開催国のアカデミーが議長アカデミーとなり、日本学術会議を含むG20各国の科学アカデミーが「共同声明」を取りまとめます。共同声明は、G20サミット開催国の首脳又は科学技術政策担当大臣等に報告されます。

(3)アジア学術会議

日本学術会議は、アジア地域の各国と学術研究分野での連携・協力を図ること等を目的に、アジアの科学者を我が国に招へいし、アジア学術会議-科学者フォーラム-(ACSC: Asian Conference on Scientific Cooperation)を平成5年度から8年間、開催してきました。平成12年度、これを発展的に改組し、アジアの科学者に広く参画を求め、この地域において重要な役割を担う国際学術団体として、アジア学術会議(SCA: Science Council of Asia)を創設しました。現在、我が国を含め18か国・地域の31機関により構成されており、事務局は日本学術会議に置かれています。
SCAは、人文・社会科学及び自然科学のあらゆる学術分野を対象として、研究発表やディスカッションを行うほか、アジア各国の研究者が協力する共同研究プロジェクトを推進するなど、活発な活動を行っています。
毎年、総会と学術シンポジウムから成る会議をアジア各国で巡回開催しています。平成30年度には11年振りの日本開催となり、第18回アジア学術会議を日本学術会議(東京)で開催しました。

(4)二国間学術交流

二国間交流は、昭和58年度より、国際協調・連携を視野に特定国の代表的学術団体等との学術研究に関する事項について情報・意見交換等を行う活動を毎年実施しています。

(5)国際学術団体への貢献

日本学術会議は、昭和24年以来、国際学術会議(ISC)インターアカデミーパートナーシップ(IAP)等、42の主要な国際学術団体に日本の代表機関として加入しており、 そのうち41の国際学術団体に分担金を拠出しています。これら国際学術団体における活動のために国際委員会及び分野別委員会傘下に対応分科会を設置しています。
また、気候変動国際共同研究計画(WCRP)など国際学術協力事業に参画し、地球規模の課題に関する各種国際学術協力事業についてシンポジウムを開催するなど、国内での実施計画の立案・調整、研究連絡などを行っています。
加入国際学術団体の活動はこちら

※1 国際学術会議(ISC:International Science Council):ISCは国際科学会議(ICSU)と国際社会科学評議会(ISSC)が2018年(平成30年)7月に合併して設立された非政府及び非営利の国際学術機関です。 各国科学者を代表する組織(140以上の国・地域アカデミー)及び学術分野・領域ごとの科学・学術連合(40以上のユニオン)によって構成されています。

※2 インターアカデミーパートナーシップ(IAP:The InterAcademy Partnership):IAPは旧IAP (The Global Network of Science Academies)、 旧IAC (Inter Academy Council)及び旧IAMP(InterAcademy Medical Panel)の3組織が2016年に統合して発足した組織です。 3つの旧団体はそれぞれIAP for Science(IAP-S), IAP for Policy(IAP-P:IAP for Researchから改名)及びIAP for Health(IAP-H)と名称を変え、2022年11月に3団体が統合しました。 重要な世界問題の解決に向け、科学的な見地から共同声明の発出等の活動を行っています。現在、140ヵ国・地域以上のアカデミーがIAPに加盟しています。

(6)代表派遣

代表派遣は、外国で開催される学術に関する国際会議等に日本学術会議の代表を派遣することにより、世界の学会との連携を深め、学術に関する国際的な研究の連絡を促進し、学術の発展に資することを目的に実施しています。

(7)フューチャー・アース(Future Earth)

フューチャー・アース(FE)は、研究、イノベーション、社会との協働による、地球環境課題の解決と持続可能な社会への転換をミッションとする国際的な研究ネットワークです。
2012年6月にリオ・デジャネイロ(ブラジル)で開催された国連持続可能な開発会議(RIO+20)の場で、既存の地球環境変動系研究プログラムであるIGBP(国際地球圏・生活圏研究プログラム)、IHDP(国際人間的側面研究プログラム)、 DIVERSITAS(生物多様性科学に関する国際プログラム)といった国際的学術プログラムの発展的な改組・統合を意図としたフューチャー・アース(以降、FE)研究計画が対外的に公表されました。
日本学術会議では、課題別委員会に「フューチャー・アースの推進と連携に関する委員会」及び関連分科会を設置し、フューチャー・アースの研究と連携を推進するとともに、国際委員会に「フューチャー・アースの国際的展開対応分科会」を設置し、 フューチャー・アースの国際事務局及びフューチャー・アースに関連する国際会議への代表者の派遣、会議の運営支援に関することを審議しています。
また、日本学術会議は、複数の国や地域に分散して存在する国際事務局ハブの一つである日本ハブの主要支持機関としてフューチャー・アース活動を推進しています。

2.国際会議・シンポジウムの開催等

(1)共同主催国際会議

日本学術会議では、国内で開催される各分野の学術に関する国際会議の中で、特に重要と認められ優先度の高い分野横断的な会議を、昭和28年より閣議の了解を得て国内の学術研究団体と共同で開催しています。なお、この会議では、例年、皇室の御臨席を賜る機会を得ています。
また、プログラムの一環として、一般市民の方を対象とした公開講座も開催し、一般市民の皆様にも分かりやすい様々な学術分野を背景とした講演を行い、社会への還元活動を行っています。

(2)持続可能な社会のための科学と技術に関する国際会議

地球規模で広がりを見せている環境破壊など人類が直面する困難な問題を解決するためには、科学的な蓄積を動員して持続可能な開発(Sustainable Development)を実現する必要があるとされています。
このような状況にかんがみ、日本学術会議では、近年、持続可能な開発にかかわる具体的な課題に関する会議を毎年開催し、様々な側面から議論を進めています。

(3)国際会議の後援 及び アカデミー・プレジデント会議

日本学術会議は、国内で開催される国際会議に関し、毎年、申請があった会議について、審査を行ったうえで後援を行っています。
また、日本学術会議は、毎年秋に京都で開催されている「STSフォーラム」年次総会を後援しています。同フォーラムでは、科学技術、政治、ビジネス、メディア各界のリーダーが一堂に会し、科学技術と社会に関する人類共通の課題について議論が行われています。日本学術会議は、この機会に、同フォーラムに参加する各国科学アカデミー会長等の意見交換の場として「アカデミー・プレジデント会議」を開催しています。