21世紀の高等教育が直面する課題 
 −教育のグローバリゼーションへの対応−
委員会名  教育体系の再構築特別委員会
報告年月日  平成14年4月4日
議決された会議  第974回運営審議会
整理番号 18期−57

作成の背景

  もはや,我が国は教育水準の高い人々によって繁栄した国ではなくなった。最近引き続いて報告されている,学級崩壊,17歳問題,大学の改革など教育の問題は,今や国民の重大な関心事となっている。そこで,自由かつ秩序のある社会を構築し,尊敬に価する国になるために,幼児から大学までの教育を一貫した体系としてとらえ,柔軟な視点と理論的な思考を可能とする教育の在り方について検討する。

現状及び問題点  

 現在、大学教育は、知識社会の登場、グローバリゼイションの進行、IT革命といった新たな変革の前に立たされている。今後の大学教育に求められるのは、国境を越えて通用する知識・技術の教育・訓練であり、世界標準に準拠した資格認定である。この傾向はインターネットの普及によって、今後一層加速化されることが予想される。今後は、国の内外の大学や大学以外の機関が、情報通信手段を活用して、新たな教育サービスを提供し始めることが予想され、それと並行して、学習者は、求める教育内容を、求める教育手段によって入手できる状況が出現する。IT革命による学習活動の脱空間化、脱年齢化、脱時間化が進行するにつれて、資格認定の方式も変化し、学習の過程ではなく、学習の成果をもとに資格認定を行う機構が形成されることが予想される。今後、大学はこうした多様な学習内容提供主体との競合関係に入ってゆく。こうした状況のなかで、大学は今まで以上に、自己改革、自己変革を迫られてゆくことになる。 

改善策・提言等

 「本委員会としての提案」では、上記の認識に基づき、3つの提案をしている。
 第一に、多様な学習形態を用いた、多様な学習内容の供給体制をより有効にし、各種学習情報の提供主体間に健全な協力・競争関係を成立させるため、従来、大学教育を規定してきた国内法規を抜本的に見直し、大学がこうした協力・競争関係の中で自己変革、自己改革を通じて、柔軟に対応しうるような条件を形成する必要がある。
 第二に、円滑健全な学習サービス事業が展開されるためには、あらかじめ提供される教育内容そのものに直接触れることのできない学習者に替わって、サービス内容を紹介し、その水準を審査・認定する複数の機関、その水準を維持・向上させるための仕組みを設ける必要がある。
 第三に、今後、多様な学習内容の提供主体と、各自の選択にしたがって自由に学習内容を選択する学習者との間に、市場メカニズムが形成されるが、その反面、人類の存続、学問の継承に必要であっても、市場からの需要が少ない教育内容や学問分野も存在する。これらの分野に対しては、公的機関による助成が不可欠である。今後、公的機関はグローバルな視点に立った学術政策、文化政策、芸術政策、スポーツ政策などを展開する必要がある。

報告書原文  全文PDFファイル(116k)

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1.近代日本の教育体系の成功の理由2.日本的教育体系の問題点3.大学教育の問題点
4.大学教育へのインパクト5.日本人は教育が好き?

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