安全で安心なヒューマン・ライフへの道
委員会名  ヒューマン・セキュリティの構築特別委員会
報告年月日  平成15年3月17日
議決された会議  第989回運営審議会
整理番号 18期−43

作成の背景

 2000年10月の日本学術会議134回総会は、第18期の活動を開始するにあたって、@学術の立場から、現代の人類が共有している課題の解決策を示すために「日本の計画(Japan Perspective)」を提案すること、Aその解決策の探索と相関する「新しい学術体系」を提案すること、を「活動計画」の基本とする旨を決定した。 

現状及び問題点  

 学術の成果が人類に大きな恩恵をもたらしたことは疑いない。この報告に即して言えば、人類普遍の願望である「安全で安心なヒューマン・ライフ」を脅かす「危険」や「不安」を、その原因とともに認知させてきたのは学術の力であったし、たとえ現在の学術水準では制御不能の自然災害のような危険や不安であっても、それを予知し一定の対策を可能としてきたのも学術の力であった。しかし、学術の発展そのものが人類に脅威・危険・不安をもたらしてきたのも事実である。ヒューマン・ライフを脅かす人口爆発、地球環境の破壊、食糧・資源・エネルギーの枯渇、飢餓と貧困、戦争・地域紛争、情報化社会の弊害、医療事故、薬害、一国社会保障の限界、国際相互理解の欠如、企業活動の暴走、さまざまな危機の頻発等々といった事象は、多かれ少なかれ学術の「成果」たる「知識の増加」とそれによる「人類の行動力の向上」を要因としていることも否定できない。この報告は、「安全で安心なヒューマン・ライフ」という切り口から、人類的課題の所在とその解決策を「中立的な助言」として提示することを試みた。引き続き学術には、このような「自らを原因として生起した問題」を「自らの力で解決する」ための学術の刷新という、困難ではあるが避けることのできない責務が待ち受けている。 

改善策・提言等

 そのような責務を果たす「新しい学術体系」は、別途審議されているので、ここでは立ち入らないが、この報告が検討してきた領域の限りでも、「安全で安心なヒューマン・ライフへの道」を構築するには、人類の安全・安心のあり方を調和のとれた内容で示すことのできる俯瞰型研究プロジェクトが、「新しい学術」として求められていることは明瞭である。
 開拓されるべき「安全・安心学」という研究プロジェクトは、まさにこの俯瞰的研究プロジェクトとしてとりくまなければならない。「安全で安心なヒューマン・ライフ」こそが、「近代」というプロジェクトの核心であり、かつこれからもなお引き続き追求すべき「未完のプロジェクト」だからである。

報告書原文  全文PDFファイル(1040k)

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1.safeとsecurity2.ヒューマン・セキュリティ3.ヒューマン・セキュリティの原意と現意
4.生態系・生物多様性のヒューマンな保全5.宇宙活動とヒューマンライフ
6.人口問題に向き合う食糧供給のヒューマンなシステム7.医療における安全とヒューマンな医療

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