新しい学術体系
−社会のための学術と文理の融合−
委員会名  新しい学術体系委員会
報告年月日  平成15年6月24日
議決された会議  第995回運営審議会
整理番号 18期−29

作成の背景

 第18期日本学術会議の期初の定期総会(第134回総会)において、期の活動計画として、「人類的課題の解決のための日本の計画Japan Perspective」の提案、「学術の状況および学術と社会との関係に依拠する新しい学術体系」の提案の二つの課題を設定した。第1の課題「日本の計画」の提案については、運営審議会に附置された「日本の計画」委員会(委員長:黒川清副会長)が、第2の課題「新しい学術体系」の提案については、同じく運営審議会に附置された「新しい学術体系」委員会(委員長:吉田民人副会長)が取りまとめを担当した。本報告はその第2の「新しい学術体系」委員会の活動報告である。

現状及び問題点  

 1章から5章は上記分科会の報告である。俯瞰型研究プロジェクトは、第17期日本学術会議で吉川弘之会長のイニシアティヴの下に提唱されて以後、新しい学術の在り方の一つの方向を示すものとの理解が進んできている。第1章はそれを受けて、「俯瞰型研究プロジェクト研究理論」分科会で行った、俯瞰型研究プロジェクトの理論的解明、具体的方法の検討結果を述べている。第2章は「価値選択の合理的根拠」に関して、個人としての価値と共同社会としての価値が対立する問題を克服するための考え方などについて、「価値選択の合理的根拠」分科会で検討を行った事柄をまとめたものである。第3章は「科学論のパラダイム転換」分科会での検討の総論である。第4章は「学術研究の評価基準」分科会での検討結果を述べている。第5章において、一つの具体的事例として、膨大な研究費を必要とする「大型科学計画」の現状とその問題点について「大型科学計画」分科会での検討結果を述べる。
 上述の第1章から5章では、現在の学術の体系について、その内包している諸問題を提起し、それぞれの課題での横断的問題ならびにそのための問題解決のための若干の具体策を提案している。

改善策・提言等

 第7章では学術の体系全般に関わるパラダイムの転換に関する一般的試論の一つを提出するが、第6章は、それに先立って、そのような一般的取扱いにおいて発生する困難とそれを克服するための課題について述べている。第7章の提案は、科学の対象とする根源的要素として、従来の物質・エネルギーに‘情報’を、その秩序原理として自然科学法則に‘プログラム’を追加する。さらに‘情報’をシグナル情報とシンボル情報での二つの形態に分け、これに対応して‘プログラム’を、シグナル性プログラムとシンボル性プログラムに分けて、広く学術が対象とする世界を物質界、生物界、人間界の三層構造として提案し、これに基づいて学術の体系がどうあるべきかを論じたものである。しかし、これはあくまでも試論であり、「新しい学術体系」委員会はこれを本報告に組み入れることには賛同しているが、この内容については委員の中で異論がないというわけではない。この報告が一つの動機となって、新しい学術の体系化に向けての検討が進められ、さらには別の新しい試論が提案されるなど、新しい学術の体系に向けての論議が科学者コミュニテイで活発に行われることを委員会として期待しているのである。

報告書原文  全文PDFファイル(455k)

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1.社会のための学術−文化としての学術との対比2.俯瞰的研究プロジェクト−なぜ俯瞰か?
3.新しい設計科学−認知科学との対比4.価値選択−個人の価値意識の集計は可能か?
5.価値多様化社会における合意形成は可能か?
6.ゲノムをめぐる二つの科学論的解釈−法則という「秩序」か、新しい「秩序」か

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