学術資料の管理・保存・活用体制の確立および
専門職員の確保とその養成制度の整備について
委員会名  学術基盤情報常置委員会
報告年月日  平成15年6月24日
議決された会議  第995回運営審議会
整理番号 18期−20

作成の背景

 わが国における学術資料の管理・保存・活用体制は形の上では整備されているが、実際には貧弱な施策しか施されていないのが実状である。一方、20世紀後半以降、社会は急速に変化し、日本の社会や文化を支えてきた地域社会は急激な変貌を遂げている。地域社会がもっていた種々の学術資料が急速に消滅しつつある。それを収集・保存する対策を緊急にとらないと、地域がもっていた多様な特質を語り伝える貴重な資料が消滅し、取り返しのつかない事態に陥る。緊急にこうした事態に対処する措置が必要になっている。

現状及び問題点  

 さらに、多彩さをもっていた地域社会は価値観の画一化などの要因により文化や社会の規範や技術を次世代に伝える機能を失っている。地域社会の自信と誇りを取り戻すためには、地域の史資料、標本資料を活用した体験学習を含む学習活動などの文化活動が必要になる。従来、地域や家庭が担っていた伝承機能を地域の文化拠点などが肩代わりする必要もある。そうした中で自然との触れ合い・共生を図ることも求められる。
 その核をなすのが、地域に遺る各種の学術資料である。すべての施策の根幹になるものであり、収集・保管・研究をした上で活用をする必要がある。学術資料としての各種の資料の保管・活用の現状は欧米諸国に比べきわめて貧弱である。大学等の研究機関での標本資料の保存は、博物館と比べても保存は体系的になされてないし、相対的に優れている博物館としても埋蔵文科財等の保存は、十分ではないし、さらに産業の近代化遺産の存在を考慮に入れたとするならば、抜本的な制度の見直しと各種の資料を活用した地域コミュニティの文化活動の拠点作りが緊急に必要である。

改善策・提言等

 まず各種施策の基礎資料として現状の把握が求められる。調査は資料が保管されている可能性のあるあらゆる場所を対象にして、現在の学術水準に応じた分類による悉皆調査にすべきである。調査に基づき、文化施策の指針を樹立する。指針を基に学術資料の収集・保管・活用の原則を各学術分野に配慮しつつ設定する。学術資料の保管・活用場所は、資料が収集された地域に置くことを原則とする。学術資料を核にして、図書館・博物館・公文書館・公民館が一体的に構成する、地域住民が生涯を通して参加できる学習活動を実施する。これにより地域社会を再活性化させ、日本社会全体を活力あるものにする。その中で新たな価値観、新たな生活様式が地域ごとに醸成できるように努める。
 以上の施策推進の成否を左右するのは、博物館・文書館等の専門職員の力量である。専門職員に対する十分な資格付与と養成制度の確立、その適切な配置と待遇が欠かせない。上に述べた施策実現のためには法改正をも含む制度の抜本的な見直しが必要になろう。その施策実現の基礎になる下記の事項について再度提言する。これらはすべての施策の本質的な根幹をなすものである。早急に制度化することが求められる。

報告書原文  全文PDFファイル(265k)

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1.史資料保管の現状2.埋蔵文化財関係資料の実状3.文書類の保管の実状4.近代化遺産関連の資料

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