「資源生産性」向上のための材料戦略
委員会名  物質創製工学研究連絡委員会
報告年月日  平成15年7月15日
議決された会議  第996回運営審議会
整理番号 18期−11

作成の背景

 循環型社会形成推進基本法が制定されて3年、我が国も地球的視点から、持続可能な社会構築に向けて目標を明確にし、具体的な戦略を立てて推進することが急務の課題となっている。その中核となる考え方が資源利用のあり方、すなわち資源生産性であり、その向上のためには生産と消費における材料の果たすべき役割と材料戦略を明確にする必要がある。

現状及び問題点  

 20世紀は、技術の急速な発展とその応用によって、多くの国々に物質的豊かさや利便性そして健康的な生活を実現させてきた。その反面で、急速な物質、資源、エネルギー利用の拡大が地球資源の枯渇を招き、さまざまな環境問題を顕在化させている。
 特に、日本を含む工業先進諸国では、大量の鉱物資源、化石系エネルギー資源、動植物資源を諸外国から輸入し消費していく経済システムが確立され発展してきたために、消費された資源の行方としてCO2を含む廃棄物の増大という問題に直面した。その結果として循環型経済社会システムへの移行など、生産と消費の在り方において大幅な転換を迫られている。

改善策・提言等

 材料技術は古くから資源の有効利用や材料特性を向上させることによって人類の幸福と福祉の向上に多大な貢献をしてきた。循環型社会の実現を目指した「ものづくり」や「価値づくり」は製品設計におけるライフサイクル的思考や次世代への長期的で俯瞰的な資源利用の視点を基盤とするものでなくてはならない。そのような観点から、「資源生産性」の向上にリンクした材料戦略の構築と実現を以下のように提案する。

a) 材料における「資源生産性」を向上させるために次の三つの領域で戦略的な推進を図る。
環境負荷の少ない素材やリサイクルを容易にする材料の開発、再生材の利用などの材料技術開発、それらのシステム化の推進。
素材・材料を効率よく利用するための産業間横断ネットワーク構築とそれに必要な材料プロセス技術開発。
工業製品の生産と消費システムの革新に資するマテリアルリース社会の構築。
b) 材料利用分野、および連携して推進すべき領域で戦略的な推進を図る。
資源生産性を重視した工業製品のライフサイクル設計を普及させるための材料選択の考え方とデータベースの構築。
資源生産性向上のための諸制度・施策の整備、「資源生産性」評価法の開発とその基盤となる情報提供システム整備。
「資源生産性」向上を国境を越して達成するための国際的な人材育成、学術・技術の普及、国際規格などの国際的連携と日本のリーダーシップ確立。
c) 上記を実現するため経済、社会を包含する総合的推進機構を設立し、戦略的な推進を図る。

報告書原文  全文PDFファイル(46k)

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1.持続可能な社会と資源生産性2.資本生産性3.脱物質社会と資源生産性
4.エコノミーとエコロジーの融合と資源生産性5.材料における資源生産性向上戦略
6.市場における「資源生産性」向上−マテリアルリユース社会

関連学協会
日本金属学会、金属材料関係、高分子材料関係および化学系学協会


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