「文明誌」という知の新領域開拓の可能性を検証する
委員会名  文明誌の構築特別委員会
報告年月日  平成15年7月15日
議決された会議  第996回運営審議会
整理番号 18期−2

作成の背景

 21世紀における人文・社会科学の役割に関する日本学術会議声明(平成13年4月)の趣旨を具体化する企ての一つとして、文明の諸相に関する「新しい博物学」としての「文明誌」の構築が日本学術会議の目的の中の「新しい科学の提唱」に該当するものといえるかどうか、その実行可能性を検討するため、文明誌の構築特別委員会が設置され、集中的な審議を行なった。ここに1年間の委員会活動の成果を集約し、対外報告(案)をとりまとめた。

現状及び問題点  

 報告は4つの部分からなる。1.文明誌の構築はなぜ必要か、2.文明誌への取り組み方の基盤を検討するいくつかの視点、3.文明誌構築の実行可能性についての評価、4.提言、という構成である。1.において、文明および文明誌の定義を与え、社会的関心の意味を考察するとともに、ひろく学術の動向の中で個と多様性の視点から全体像を把握しようとする方法態度を共有する潮流があることに注目する。2.において、統合性をめざすべき人文社会科学の将来課題を考察し、ついで宇宙誌・生命誌・人類誌・環境誌・伝統知識・未来像の視角から文明誌の拠るべき視座を探求する。3.において、このたびの実行可能性検討の結論として、文明誌の構築には十分な可能性と意義があることを認め、その推進のため、この新領域を支えそこに参加する社会的裾野の形成をも含めて、何よりも新しい領域の担い手となるべき科学者の主体的条件の確立が重要であるとした。

改善策・提言等

 以上の検討結果を踏まえ、科学者コミュニティに対し、学協会の連携による基礎固めの作業から堅実に出発すべきことを呼びかけ、政府および自治体に対し、「文明誌」構築を一つの国家目標として検討すること、公文書館、博物館、美術館、図書館、資料館等への総合施策に文明誌の観点を生かすこと、学校教育の場で文明誌の観点が生かされるよう環境条件を整備すること、を求め、教育機関に対し、あらゆる課程で「文明誌」の観点を生かす教育プログラムの策定を、また広い「文明誌」的見識をもつ次世代研究者の養成を、それぞれ提案し、マス・メディアに対し、文明誌の見地を生かした紙面・番組等の制作活動をさらに強化すること、文理融合や俯瞰的視野をつよめる学術の動向を社会に知らせることを希望し、社会に対し、地域の活動において文明誌にかかわる活動への関心や、身のまわりの事象に目を向ける等身大の「文明誌」への取り組みを、訴えている。

報告書原文  全文PDFファイル(149k)

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1.「文明」をどう定義するか2.「文明誌」とは3.生命誌4.宇宙誌5.物質誌6.民族誌

関連研究機関・学協会
全学協会、公文書館、博物館、美術館、図書館、資料館、教育機関


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