ヒートアイランド現象の解明に当たって建築・都市環境学からの提言
委員会名  社会環境工学研究連絡委員会
ヒートアイランド現象専門委員会
報告年月日  平成15年7月15日
議決された会議  第996回運営審議会
整理番号 18期−1

作成の背景

 内閣府の総合規制改革会議「ヒートアイランド現象の解消」について調査・審議され、2002年3月「規制改革推進3ケ年計画」として閣議決定した。この決定に先立ち、環境省ではヒートアイランド現象は都市の熱大気汚染現象であるとの見解を公表している。環境省・国土交通省・経済産業省等関係省庁からなる総合対策会議の設置によって、総合的な推進体制を構築するとともに、「解消対策に係わる大綱の策定」についても検討が始まっているが、問題は総合的にみた科学的研究成果があまりに少ないことである。

現状及び問題点  

 都市のヒートアイランド現象に関しては、1850年代ごろからヨーロッパで観測されていたが、1960年代から近代建築の冷房や車の増大がシカゴやニューヨークで顕著になり、排熱を河川に捨てるなどの対策がとられてきた。しかし、欧米先進諸都市に比べ、東京首都圏や近畿圏の都市規模の人工排熱は比較にならない程に大きい。
 20世紀の100年間で東京首都圏の市街地面積と人工排熱はそれぞれ100倍になった。これがヒートアイランドの直接的原因であるが、その対策に最も有効なグリーンベルトが1930年当時、2万haが計画されていたが、その形骸すら残っていない。木造密集危険市街地が2万ha以上、さらに都市内河川の80%が埋め立てられてしまった。12万haあった東京湾の2万haが工業用地として埋め立てられ、火力発電所や石油・鉄鋼コンビナートが立地した。このような状況から、必然的に生じたヒートアイランド現象の解明は社会的にも急務である。

改善策・提言等

@ 都市再生・構造特区の指定並びに開発に当たって、ヒートアイランド現象を拡大させないよう十分な対策を立てる。都市再生事業等による都市開発行為がヒートアイランド現象を悪化させないようヒートアイランドアセスメントを実施する体制を整備する。
A 人口過密な大都市にあっては、アメダス測定点の10倍以上の観測点を立体的に配置する。少なくとも、政令都市における重要な測定点を明示し、その管理手法を検討する。
B 各地方自治体にあっては、それぞれ都市計画の前段階で環境計画の策定が義務付けられている。その環境計画の中で、都市環境気候図の作成を要望する。

報告書原文  全文PDFファイル(3843k)

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1.ヒートアイランド現象とは2.ヒートアイランドの問題点3.ヒートアイランドの原因
4.ヒートアイランドの対策,5.都市環境気候図の作成と建材がヒートアイランドに与える影響,
6.都市排熱を下水・河川・海水によった場合の環境影響,7.物からの排熱処理を大気によった場合の解明

関連学協会
国土交通省気象庁気象研究所、社団法人環境情報科学センター、東京都環境科学研究所、
独立行政法人土木研究所、独立行政法人建築研究所、電力中央研究所


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