人工物のライフサイクルデザイン(LCD)のための
  振興すべき基礎学術
委員会名  人工物設計・生産研究連絡委員会
  生産システム学専門委員会
報告年月日  平成12年4月24日
議決された会議  第934回運営審議会
整理番号 17期−46

作成の背景 

1. 現代社会において、地球環境と資源の有限性を意識した「持続可能な発展(Sustainable Development)」が重要な概念となってきた。
2. 環境問題の多くの部分で大量の人工物を作り出している製造業に責任がある。
3. 製造業が持続可能な発展を達成しない限り、環境問題は悪化し続ける恐れがある。

現状及び問題点 

1. 省エネルギー、材料リサイクル、廃棄物処理などの個別の環境対策技術は急速に進歩しているが,現状の人工物を受け入れて、環境対策を施すだけでは限界がある。
2. 持続可能な発展を実現するためには循環型の製品ライフサイクルを構築する必要があるが、既存の製品やシステムのままでは、環境負荷やコストの面から、その実現が困難。
3. よって、持続可能な発展を明示的に目指す新しい製品群やシステムを追求すると同時に、製品やそれらに付随する情報を社会(製品利用者など)と共有する「社会に開かれた」製造業への構造転換が必要になる。

改善策・提言等

1. 持続可能な発展を目指す循環型製品ライフサイクルを実現する「ライフサイクルデザイン」の基礎学術を振興すべきである。
2. このためには、「いかに作るか」から「何を作るか」へ向けて、既存学術体系を再構成・統合すべきである。
3. 「循環型製品ライフサイクル」の基本概念は、産業界にある程度浸透し始めているが、これをより合理的、かつ、高度に行うための基礎学術を長期的視野で振興し、基礎技術の拡充をはかるべきである(啓蒙フェーズから基礎学術振興フェーズへの移行)。
4. 振興すべき基礎学術は以下の3点に整理できる。
@ サービス戦略、ビジネス戦略の合理的策定を実現する、「ものの提供からサービス提供によるビジネスへ」転換するための学術
A 製品のライフサイクル全体の設計、管理を行うための学術
B 循環型製品ライフサイクルを実現するための要素技術(材料技術、プロセス技術、エネルギー技術など)の高度化
5. 振興策として以下の3点を提言する。
@ 教育:教科書の整備、大学における講座、コース、学科の新設、教育シラバスの整備、一般教養科目への展開
A 学術領域の確立:学問横断的な学会連合や会議の振興、産官学の連携の推進、科学研究費における当該分野の設立、本学術領域のロードマップの策定
B 学術プロジェクトの推進:集中的に資本を投入した大規模プロジェクトや学術研究の推進拠点となるCOEの設立
6. 補足として、前項Aに対応する活動の一つとして、関連学術団体の緩い連合体である「エコデザイン学会連合」を発足させたことを付記しておく。
※人工物とは、一般に工業製品、ソフトウェア、建築物、社会基盤施設、芸術作品など、人間により造られたあらゆるモノを含むが、本報告書では、主に工業製品を中心に扱うこととする。

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キーワード  青色のキーワードをクリックすると解説文がご覧になれます。

人工物のライフサイクルの問題,環境問題,基礎学術,製造業,持続可能性,環境対策技術,
循環型製品ライフサイクル,教育シラバスCOE,ライフサイクルデザイン振興体制

関連研究機関・団体・学協会
エコデザイン学会連合



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