我が国における鉱床学の研究・教育の推進について
委員会名  鉱物学研究連絡委員会
 鉱床学専門委員会
報告年月日  平成11年9月20日
議決された会議  第924回運営審議会
整理番号 17期−16 

作成の背景  

 来たる21世紀において人類が直面する最も困難な課題は「資源と環境」の問題であろう。
 国内の鉱山数が減少した結果、現在我が国の経済はほとんどの金属・非金属原料を外国に依存するというきわめて脆弱な構造をとらざるを得なくなっている。
 対策としては,国内の大学・研究機関に高度のレベルを維持する鉱床学の研究室を擁して鉱床探査に従事できる技術者を育成し、世界各国の鉱床探査において初期の段階から資本とともに技術を提供して、鉱山の共同開発に積極的に参加していく必要がある。これができなければ,国としての対応を大きく誤ることになりかねない。

現状及び問題点 

 しかしながら最近にいたってその研究・教育体制は憂慮すべき状態に陥りつつある。それは端的に大学における教員数の著しい減少に表われている。また、鉱床学を専攻する大学院生は発展途上国からの留学生の比率が高く、国内の後継者の育成や社会へ送り出す人材養成に問題がある。もし一般に「日本ではもはや稼行鉱山はないのだから鉱床学は必要がない」といった誤解があるとすれば、それは由々しい問題である。

改善策・提言等

1. 鉱床学の重要性についての一般社会の認識を高める。「資源開発すなわち環境汚染」といった誤ったイメージを払拭し、国民が世界の資源開発に対して正しい理解をもつよう関係者の意識を高める。
2. 大学におけるポストの確保に努める。バランスのとれた地球科学の発展のためにも、大学・研究機関の中に一定数の鉱床学のポストが必要である。
3. 鉱床学研究者は、その得意とする手法を生かして関連分野への展開に努め、未開拓の地球科学の分野を切り拓く必要がある。
4. 国内の稼行鉱山を減らさないように努力し、また既存の鉱山施設を利用した実習・教育のための実習鉱山を設置する。
5. 鉱床学の研究フィールドを積極的に海外に求め、留学生などを通した国際貢献に努める。
6. 国内の公的な機関で実施されるボーリングのコア試料とデータ(柱状図など)、休廃止鉱山の坑内地質図などの貴重な情報を保全する手段を講じる。
また各大学に保管されている岩石・鉱石試料を、研究・教育に役立てる大学博物館・地域博物館を設置する。

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鉱床鉱床学資源と環境稼行鉱山、 研究・教育体制、実習鉱山、 休廃止鉱山、
大学博物館・地域博物館、 坑内地質図岩石、 人材養成、 鉱床生成モデル、
無機地球化学、 黒鉱鉱床、 鉱床学者

関連研究機関・学協会
金属鉱業事業団、European Science Foundation、Gordon Research Conference、
国際鉱物学連合、工業技術院地質調査所




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