商学教育・研究の社会への対応と要請
 −現在と将来−
委員会名  商学研究連絡委員会
報告年月日  平成9年7月15日
議決された会議  第884回運営審議会
番号 研連16−66

作成の背景 

 日本学術会議商学研連には、商業学、マーケティング・サイエンス、広告、商業英語、商品学、保険学、物流、消費経済学、消費者教育などの分野に関連する学会が参加している。また、商学という名称は、商学部、商学科、商学士、商学修士、商学博士などの名称とともに、大学制度の中に確立されており、これらの大学制度の観点から見ると、商学と呼ばれる分野は、さらに貿易論、金融論、銀行論、証券市場論、交通論、海運論などを包括する場合が多い。商学という名称は、これらの学問分野の総合名称として用いられている。

現状及び問題点

 しかしながら、今後の経済社会の動向を見ると、このような専門・分化を支えていた制度的基盤が大きく変化する兆しがある。とくに、次の3つのメガトレンドに留意することが必要であろう。

 第一は、規制緩和の進展である。商業論、保険論、広告論、物流論などは、それぞれ、流通業界、保険業界、広告業界、運輸業界などを主要な研究対象の一つにしてきた。これらのサービス業界は、従来、種々な政府規制の下におかれ、このことがこれらのサービス市場の相対的独立性を保証してきた。それぞれの業界の関連法規やそれと密接に関連した業界固有の制度や商慣行の知識なしには、これらの分野の十分な研究を行うことは不可能であった。しかし、近年急速に進行し始めた各種の規制緩和によって、業界の壁が壊れつつある。その結果、これらのサービス市場がより大きい市場へ統合される傾向にある。

 第二に、急速な情報インフラによって、経済活動の情報インフラが激変する傾向にある。この点でとくに注目すべきは電子市場の形成である。この市場では、企業だけでなく消費者にまで情報端末が普及する。これらの情報端末は光ファイバーネットワークによって相互連結される。そして、このネットワークを通じて、マルチメディア型の情報伝達が行われる。このような電子市場がどのように普及するかはまだ予断を許さないけれども、それらが近い将来において取引費用を大幅に削減するであろうことは、容易に予想できることである。この結果、経済における、商流、物流、情報流、資金流が多様なかたちで統合される可能性がある。

 第三は、国際化の進展である。すでに日本経済の種々な分野が世界市場に組み込まれようとしている。商学関連分野の多くは、その市場範囲を国内市場に限って研究を進めてきた。しかし、日本市場自体が国際化するにつれて、地理空間的には国内問題であっても、それは絶えず世界市場との連動において発生することになる。今後、商学関連のどの分野においても、国際的な視座がますます重要になってきている。

改善策・提言等

 以上のようなメガトレンドから見ると、商学関連分野は、今後、それぞれの固有の問題についての研究を国際的な視座から深めるとともに、各専門分野間の研究連携をますます強化していくことが必要になってくると思われる。

 

 
報告書原文  全文PDFファイル(2,878k)

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商学、 取引、 商品学、 保険事業
関連研究機関・学協会
日本商学会、日本商品学会、日本マーケティング・サイエンス学会、日本広告学会、日本保険学会、日本消費経済学会、日本消費者教育学会、日本物流学会




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